登山ルート別気象

富士山まめ知識

プロフェッショナルのつぶやき

イマフジを一言で表すと?

富士山の お天気コンシェルジュ

  • 富士宮口ガイド組合代表
  • 登山ガイド / 写真家

水本 俊輔

山頂から観天望気

イマフジをどう使っていますか?

私たち登山ガイドは登山者の安全を担保する大きな役目があります。 富士山の天候をリアルタイムでモニターできるという事は、行程をマネジメントしていくうえで、安全性を担保できる非常に大きなメリットとなります。
現状、富士山に関する天気予報では色々なサービスごとに1時間~6時間先の予報が公開されており、ある程度の情報として参考にできますが、夏の富士山は数分~数十分の間に天気が移り変ってしまうことも多々…(これは予想外という雨量や強風など)
私たちが山中で行う天候予測のはじまりは5合目に向かう道中から富士山を取り巻いている大気コンディションを目で見ることから始まります。事前に確認している沢山のデータや材料を重ね合わせ、実際に自分の目で見た気象状態に経験則や観天望気をプラスし、イマフジで数値化された様々なリアルタイムデータを掛け合わせる事で、富士山の中に居ながら“先の天気を読み解くチカラ”の精度を格段に上げてくれます。

富士宮5合目へ向かう際の観天望気

イマフジを一言で表すと?

富士山のお天気コンシェルジュ。富士山の天気は任せた!

なぜ富士山の気象が大事/必要ですか?

登山というアクティビティにおいて天気はとても重要な要素を占めています。
一括りに富士山といっても、北側(山梨県)と南側(静岡県)では天気の様相が違うことがあります。安定して晴れているコンディションではそれほど大きな差はありませんが、ときに荒天に移っていく際は雨雲や雷雲はどちらから来てどちらへ抜けていくか、どれくらいの時間荒天に見舞われるか、風はどの方向からどのくらいの風速で吹くかなど、気象遭難を回避するにあたっては相対的な材料が必要になります。
登る前に天気予報を見てきただけの人と、登りながら天気予報を見る人とでは、極端な話、雨に打たれた人と打たれなかったというような差がでる事があります。
また、夏といっても富士山では秋から冬のような気温なることもしばしば。 富士登山中に罹患する代表的な低体温証は「風冷え」もひとつの要因となり、気温はもちろんのこと、風速を確認することも重要です。体感気温は気温から風速を引き算することでイメージできますので、適切な防寒の度合いやタイミングを図ることによって低体温証リスクを回避することに繋がります。 富士山の気象を見誤ることは、時には命までかすり取られてしまうことになりかねない程。 普段見慣れている“下界”の天気予報や気象状態と異なることを自覚することが必要です。

富士山を登山する方へ伝えたいことは?

夏の富士山には登山自体が初めての人もいれば、何回と登頂しているベテランまで、多様な目的をお持ちになって富士山に登られることと思います。
登山ガイドという職からお伝えしたいのは、「富士山を征服」する気持ちで登るより、「富士山の懐に抱かれにいく」という気持ちで登っていただくと、登山中必ずや身に降りかかる様々な問題や苦難にも寛容になれるということがあります。
富士山は山頂へ向かうにつれて体力的な問題、気持ちの問題、天候の問題、技術的な問題、幾多の問題が心身を削り、行程を狂わせてくる山ですので、先述したように少しでも柔和な自分で望むことで、諸問題に対応できる気持ちの余裕を作り出せます。
富士登山中には背中に重い荷物を背負って登りますが、ひとつだけ背中に加えて登っていただきたい物は「思い遣り」です。
登山中は周りにいる方々も皆さんと同じように体力的にも精神的にも辛い状態で登っている時間もあることでしょう。
登っている最中に相対する人は「明日の自分」、下山している時に相対する人は「昨日の自分」といった思い遣りや譲り合いの気持ちを持っていただくことが “富士山の美化”に繋がっていきます。

富士宮ルート山頂直下の登山者と天の川

富士山のどんなところが好きですか?

日本で一番宇宙に近いところですので、コンディションの良い日の夜には全天にひろがる夏の星座や天の川に手が届くような感覚を持つことがあります。
日本という国を俯瞰できる場所であるのと同時に、地球と宇宙をより現実的に感じることができる場所でもあります。
また、活火山であることと、山体の大きさからは日常生活では決して感じることのできない得体のしれない畏怖感も外せません。
職業柄、色々な動機や目的を持って富士山に登りに来られた方々の“人間らしい”ところを傍で見る機会も多く、感動の涙、達成の涙、協力の涙、敗退の涙、達観の涙など、日常生活の殻を破る瞬間や、人生模様を垣間見れることが富士山に携わり続ける魅力でもあります。
富士山は非日常を実感として捉えられるシチュエーションで溢れすぎていて、出会えた人たちの富士登山という人生の彩りに触れられたこと、神様の仕業としか考えられない景色や、信じられない数えきれない非日常体験が病みつきになってしまい、十数年富士山沼にハマり続けています。

富士山を通り過ぎた雷雲

イマフジのココがいいよ!という部分は?

富士山を様々な角度から“見える化”してくださっている現在進行形のイマフジ。
ココがいいよ!とひとつに絞ることはできないのですが、富士山のメインルートごとにリアルタイムの気象観測データを確認できることです。
イマフジから知ることができる観測データは、効果的なペース配分や水分摂取の頻度、衣類の着脱タイミング、山中で一番危険な雷をアラートできるといった、登山中に参考にできる有益な情報が沢山あります。
開山期中には富士山に登らずとも日本の一番高い場所からの景色を望めてしまう、ある意味では反則レベルの全天球カメラが富士山頂・剣が峰に設置されますので、世界のどこにいてもリアルタイミングで富士山頂からの御来光を観望することだってできてしまいます!
イマフジは気象に関するコンテンツだけではなく、富士山を登るにあたっての準備物や服装・装備、ルールやマナーなどの知識習熟ができる富士登山ポータルサイトとして、登っている最中の人はもちろん、登る予定のない人でも存分に“イマのフジサン”を知ることができますね。

宝永火口と水本

現在、行っている富士山関連の活動/プロジェクトをご紹介ください。

私たちは日本国内から富士山に登られる方々、インバウンド最盛の現在、世界各国から富士山に登りに来られる方々が安全に登山していただけるよう、多角的にサポートしています。
クライアントの方々はもちろん、その日その時同じく富士山に登られている登山者の安全を守る活動、これから富士山に登りに来られる方々へ安全意識を備えて登りに来ていただけるよう啓発やアドバイスを発信し、日々富士山を登り下っています。
ここ数年は富士山において様々な問題がクローズアップされていますが、富士山を内側から知る者たちとして、ひとつでも多くの問題を解決に導いていけるよう日夜尽力しています。

その他、イマフジや富士山に関して伝えたいことはありますか?

長年富士山に携わってきた者からすると待望の富士山の気象特化コンテンツです。
イマフジは現代の富士登山文化を作り上げていくにあたって、これからも大きな役割を担っていくであろう現在進行形のコンテンツ。
いまふじぃ~さんのような大きな“眼”で富士山を愛でる人、登る人、研究する人、多種多様な人々の富士山フィルターとなってもらえるよう、赤い大きなフラッグを富士山に置き続けて下さい!

水本 俊輔

Mizumoto Shunsuke

  • 富士宮口ガイド組合代表
  • 登山ガイド / 写真家

PROFILE

奈良県生まれ。紀伊山地の霊場と参詣道となった世界遺産の山域でガイドを開始。
2010年より富士吉田市公認登山案内人として富士山に携わる。
2018年からは富士宮口ガイド組合代表を務め、これまでに一万人以上の登山者を富士山頂へ導き、富士山登頂回数は500回を超える。
富士山から見た星空に魅せられ、富士山から見える景色を切り取る写真家の側面も。富士登山に関わる講師活動や、多数のTV出演やラジオ出演、登山雑誌など各種メディアでも活躍中。