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富士登山で最も怖いものは何?

富士山の雷の危険性

富士登山で最も怖いものとは…

「富士登山で最も怖いものは何?」の質問に、ガイドさん、山小屋さん、安全指導センターの方、研究者など、皆さまが一同に挙げるものが「雷」じゃ。

夏の富士山では雷が良く発生するのじゃ。

落雷を避けるには、屋内に入ること以外に有効な方法はない。

だからこそ、富士山の雷を正しく知って、正しく怖がり、正しく対策をするのじゃ!

(ナビゲーター:いまふじぃ~さん)

1熱 雷(ねつらい)

夏の晴れた日の午後に雷が発生するのは「熱雷」によるもの。

太陽の強い日差しによって、地表面は熱せられ上昇気流が発生し、大気は不安定になって積乱雲が発生し、雷が鳴る。

昔から「夏の雷は三日続く」と言われている。時には一日だったり四日だったりするが、過去の平均から三日くらいが多い。その理由は、熱雷の発生元となる上層における寒気の規模が三日くらい持続する。日本の上空に流れこんできた寒気は、下層の暖気と入れ替え作業を続けるために三日間くらいかかる。そして、上層の寒気がなくなると雷の発生もなくなり、次の寒気がやってくるまでは熱雷の心配がなく、楽しく登山ができる。

2界 雷(かいらい)

季節の変わり目などによく発生する。温暖な気団と寒冷な気団が接するとすぐには混じり合わないで、寒冷前線と温暖前線となる。界雷はこの2つの前線付近で雷雲が形成されて発生する。

3渦 雷(うずらい)

渦雷は発達した低気圧や台風の中心付近などで、周囲から吹き込む気流によって上昇気流が通常より盛んになると発生する。気温が高い時は勢力を長時間持続し、移動速度が速いため広範囲に影響を及ぼす。

一般的にいつも生活をしている場所では、雷は空から地面方向へ落ちる。

しかし、富士登山中、自分がいる場所より下の方で雷が発生したり、目の前を雷が横から横へと走ったり、雷鳴無くいきなり落雷が発生する事もある。

それは、夏の雷雲の高さが3,000mから5,000m程であり、富士宮口元祖七合目の標高が3,023m。

つまり、登山中に雷雲の中に入ってしまう場合があり、人と雷との距離がとても近い。

更に大変な事に、登山口五合目から山頂まで避難場所が極めて少ない。登山道にあるのは山小屋、公共のお手洗い等。しかも次の山小屋まで御殿場口では2時間以上かかる地点もある。

登山中に雷に遭遇しないよう、午後から雷が発生する予報が出ている場合は、午前中に山小屋に入る計画を立てる、安全な場所まで下山するような計画に変更する、勇気をもって登山を中止にするなど、とにかく事前の準備や計画が大切。

お役立ち!雷情報

1雷注意報【気象庁】

「雷注意報」は、落雷のほか、急な強い雨、竜巻等の突風、降ひょうといった積乱雲の発達に伴い発生する激しい気象現象による人や建物への被害が発生するおそれがあると予想したときに気象庁から発令される。ここで大切な事が一つある。「雷警報」は存在しない。非常に危険な状態であっても「雷注意報」まで。

気象庁 雷注意報

2雷観測情報【気象庁】

前5分間の対地放電(落雷)と雲放電が分かる。過去3時間前から見られる。

今後、どれほどの雷雲がどの方向へ移動する可能性があるか、ある程度予想を立てる事が可能。

3雷ナウキャスト【気象庁】

雷ナウキャストは、雷の激しさや雷の可能性を1km格子単位で解析し、その1時間後(10分~60分先)までの予測が分かる。10分毎の更新。

以下、活動度1から4まである。

尚、急に雷雲が発達することもあり、活動度の出ていない地域でも天気の急変には注意する必要がある。

気象庁 最新の雷観測情報
(対地放電・雲放電)及び雷ナウキャスト

気象庁 雷ナウキャストとは

4Blitzortung.org

Blitzortung.orgとは

2012年、ドイツのハインリッヒハイネ大学のDr.Egon Wanke教授らは、世界規模で高精度の落雷位置情報を無料で利用できるように落雷位置評定ネットワーク構築プロジェクト「Blitzortung.org」を開始した。

このプロジェクトの目的は、低予算で世界規模の雷センサーネットワークを実現すること。ネットワークを構成する雷センサーの運営はボランティアにより行われている。雷センサーが雷と判定したノイズは位置評定のためにサーバーに送られ、雷センサーで受信した雷ノイズの到達時間差から落雷の位置が特定される。

尚、「イマフジ。」は、この活動に参加している静岡県立大学のグループに協力し、吉田口一合目の気象観測地点に雷センサーを配置している。

Blitzortung.org

注意事項
  • 落雷位置の標定精度や補足率は、雷センサー周辺のノイズ環境等により一定ではないこと。
  • すべての落雷の位置が特定されるわけではないこと。
  • このネットワークの運営自体が研究として行われていること。

の上記3点から、ここで得られる落雷位置情報は、その正確性を担保するものではない。ご自身の判断で、参考としてのみご利用頂きたい。この情報を使った場合に発生した事故、不利益等のトラブルに関する保証は一切ない。

5午前6時における富士山頂と御前崎との気温差

雷は下界と上空の気温差が大きいほど発生の確率が高くなる。

午前6時の段階

(静岡県御前崎の気温)―(富士山頂の気温)⇒ 25度以上
約90%の確率で雷が発生

(静岡県御前崎の気温)―(富士山頂の気温)⇒ 20度以上
約60-70%の確率で雷が発生

イマフジ。富士山頂の気温

気象庁AMeDAS 御前崎(オマエザキ)

6雷から身を守る方法

雷から身を守る方法

1山小屋等の屋内に避難

雷鳴は、遠くかすかに聞こえる場合でも、自分に落雷する危険信号と考えて直ちに避難!
絶えず雷鳴と空模様に注意し、雷のけはいを察知したら、出来るだけ早く建物の中に避難するのじゃ。
雷鳴が止んで少なくとも30分以上経過してから屋外に出る。

2近くに山小屋等の避難する先がないときは、必ず樹木から離れる!

木のそばは危険!雷雨時には木から離れる。

3逃げる場所がない所での基本姿勢

万が一逃げ込む所がない時は、両足を揃えて膝を充分に折って上半身は前かがみになり、両親指で耳の穴を塞ぎ鼓膜が爆風で破れるのを予防し、残りの指で頭をかかえ下げ、雷雨の通過を待つ。

地面に腹ばいになるのは、近くの地面への落雷電流による歩幅電圧・地面と体表面の間の沿面放電による心室細動(心停止)の危険性がある。
嵐の中でこのような姿勢を取るのは、恐怖を伴い現実的には難しい。

周りの構造物に逃げ込む、五合目付近であれば車の中に入る、山であれば尾根から谷に移動するなどの行動をまず考える!

参考文献

  • 雷博士が教える 雷から身を守る秘訣 北川信一郎(ISBN978-4-7807-0330-6)
  • 雷と雷雲の科学 -雷から身を守るには- 北川信一郎(ISBN4-627-29081-0)
  • 登山者のための観天望気 城所邦夫(OSBN4-635-04315-0)