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富士山まめ知識

特集記事

富士山で後悔しないために。気象のプロが教える準備術

「一生に一度は、日本一の富士山に登ってみたい!」そう思って挑戦する登山初心者はとても多いです。しかし、富士山は高尾山や六甲山と同じ感覚で登れる山でありながら、気象条件は日本屈指の厳しさを持つという、大きなギャップを抱えた山でもあります。

今回は、山岳気象専門の気象会社「ヤマテン」の代表であり、世界の山々を巡ってきた気象のプロ・猪熊隆之さんにインタビューを敢行!初心者が陥りがちな山の天気の罠や、プロが実践している行動食・高山病対策、そして富士山の「今」を伝えるWebサービス「イマフジ」と「ヤマテン」を組み合わせた最先端のスマートな登山計画術を教えていただきました。

猪熊隆之氏

「風」と「濡れ」が命取りに。
プロが見た富士山登山のリアルな危険とチェックすべき2つの雲

富士山は周囲に遮るもののない「独立峰」であり、日本でダントツの標高を誇ります。そのため、日本列島に突き出た富士山には強い風がまともにぶつかってきます。猪熊さんは「初心者の多くは天気(雨)ばかりを気にしますが、本当に恐ろしいのは『風』です」と語ります。

風が吹くと体感温度が一気に下がり、低体温症のリスクが跳ね上がります。さらに、富士山は海(相模湾・駿河湾)に近いため、湿った空気が斜面を駆け上がって急激に天気が崩れやすい環境にあります。真夏の7月・8月でも雪が降ることさえあるのです。

猪熊さんが現場で目撃した危険なシーン

危険なシーン①
危険なシーン②

こうした危険を避けるために、猪熊さんは「登山中に必ずチェックしてほしい2つの雲」があると言います。

入道雲(積乱雲)
入道雲(積乱雲)

雲がソフトクリームやカリフラワーのようにモコモコと成長するのは、雲が「やる気を出している」証拠。特に午前7時〜8時の早い段階からやる気を出している時は、お昼頃に激しい雷雨になるリスクが非常に高くなります。

レンズ雲・つるし雲・傘雲
レンズ雲・つるし雲・傘雲

富士山特有のこれらの雲が見える時は、上空で凄まじい強風が吹き荒れているサインです。平均風速が毎秒15メートルを超えると大人の男性でもよろめき始めます。もし風でバランスを崩し始めたら、それ以上は「前進しない」のが基本です。

予報と山の天気

予報では当たらない!?
地形の癖を読み解く「ヤマテン」のこだわり

今やスマートフォンの天気予報はボタン一つで自動生成(数値予報)される時代です。平地であればそれでも高い精度を保てますが、山、特に富士山のような特殊な地形では自動予報の精度は著しく下がってしまいます。

「山の天気は複雑な地形の影響をまともに受けます。だからこそ、コンピューターの計算をそのまま出すのではなく、気象予報士の手で『地形の癖』や『過去の経験』を反映させて予報を修正する必要があるんです」と猪熊さん。

ヤマテンの予報

国内唯一の山岳気象専門会社である「ヤマテン」では、ただ晴れや雨を伝えるだけでなく、「落雷」や「低体温症」といった具体的なリスクを明記し、初心者でも危険をイメージして準備できるように工夫しています。それはかつて、ツアー登山などでプロのガイドが気象判断を誤り、多くの遭難事故が起きていた時代を目の当たりにし、「プロや登山者の命を本気で守る予報を作りたい」という泥臭く熱い想いから始まっているのです。

「ヤマテン×イマフジ」で戦略を練る!
リスクを減らすスマートなダブル活用術

では、初心者が安全に、そして最高の富士山を体験するために、データをどう使えばいいのでしょうか?

猪熊さんが提案するのは、山の天気予報「ヤマテン」と、リアルタイムの気象データを可視化する「イマフジ」のスマートなダブル活用術。

ヤマテン×イマフジ活用術

猪熊さんおすすめ!登山の天気活用術

登る前(数日前〜前日)

まずは「ヤマテン」をチェック。数日前に「大荒れ情報」が出ている場合は、山頂への登山はきっぱり中止しましょう。そこまででなくとも、2〜3日前から予報の「風速」をしっかりと確認し、計画を実行するか判断します。

当日(現場での衣服調整)

まずは「ヤマテン」をチェック。数日前に「大荒れ情報」が出ている場合は、山頂への登山はきっぱり中止しましょう。そこまででなくとも、2〜3日前から予報の「風速」をしっかりと確認し、計画を実行するか判断します。

登山中

「ヤマテンの予報」と「イマフジの実際のデータ」を見比べるのが最強のリスクマネジメントです。「予報よりも天気が早く崩れ始めているな」とか、「予報より風が弱いし、これから弱まる傾向だから大丈夫そうだ」といったように、イマフジのリアルタイムデータを使って予報を自分で微修正して行動できるようになります。

いまふじぃのコメント
  1. 1 高山病を防ぐカギは「到着後の2〜3時間」

    5合目に着いたら、すぐに登り始めず最低1時間は休憩して体を慣らします。そして、山小屋に到着したあと、眠くなってすぐ寝てしまうのはダメ!(高山病が一気に進行します)。

    寝ると呼吸が浅くなり酸素が回らなくなるため、到着後2〜3時間はとにかく起きて我慢して体を順応させましょう。

  2. 2 富士山は「雲を見る」のが一番楽しい山

    独立峰の富士山は、普段は見られないようなダイナミックな雲の変化や雲海(5合目付近でも雲の上に出られることが多い)、白い虹(白虹)など、美しい気象現象の宝庫!

    雲を味方につけて親しむことで、登るだけではない自分なりの楽しさを見つけるとより富士山の楽しみ方が増える。

プロのポケットをのぞき見!

行動食は何持って行く?
バウムクーヘン

猪熊さんは・・・

「バウムクーヘン」

低体温症の予防には糖分と炭水化物が不可欠で、今のバウムクーヘンはしっとりしていて非常に美味しく、山の行動食に最適だそうです。他にも大福やチョコ、口寂しさを紛らわせる辛いおせんべい、そして水分補給には水だけでなく経口補水液(粉末も便利)がおすすめ

猪熊 隆之

Inokuma Takayuki

  • 株式会社ヤマテン 代表取締役
  • 山岳気象予報士

PROFILE

国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンの代表取締役。中央大学山岳部元監督。国立登山研修所専門調査委員及び講師。「山の日」アンバサダー、カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。山に登ること、天気を予想すること、雲を見ることが三度の飯より大好き。登山歴はチョムカンリ(チベット)、剣岳北方稜線冬季全山縦走など。2019年以降は、エベレスト(8,848m)、マナスル(8,163m)など予報依頼の多い山に予報をしながら登頂し、山岳気象の理解を深める。朝日新聞新潟・長野・山梨版で「空の百名山」を連載中。山岳気象大全(山と渓谷社)他、著書多数。「マツコの知らない世界」になどテレビ出演多数。